逃亡日記。

散歩と映画と本がすきだ。

日記「薄暗く窮屈な廊下を歩いた」

2024年6月3日 月曜日 日記

 街へ行った。

 目的の場所は、外装が剥げた建物だった。なかに入れば、薄暗く陰気で、空気がこもっていた。天井は低く、窮屈な建物だった。

 暗い廊下を歩く。暗い顔の男女が大勢。足早に歩いている。

 

 5階。エレベーターを降りて右へ。突き当りの壁に椅子があった。椅子の上に張り紙があり、それは、わたしに向けて書かれていた。

 「ここで待て」

 

 数分間、その椅子に座り、廊下を歩く人々を眺める。歩き回る人々。みな手元の資料に目が向いている。

 わたしは、場違いな気がして、この場から去りたくなった。

 しかし、わたしを呼ぶ声がして、振り向いた。

 短髪の眼鏡を掛けた青年だった。わたしと同年代くらいの人に思えた。

 わたしは、その青年に導かれるがままに、暗い廊下を進んだ。いまでは使われていない古いロッカーが並んだ部屋の奥に扉があった。

 「わたしが入ってから、すこし間をおいて入ってください」青年が言った。

  青年は扉を開けて入っていった。わたしは、一呼吸おいて、ノックをした。

 「どうぞ」なかから声がした。

 わたしは入室した。

 

 「あなたは、老人たちがまくしたてる訳の分からぬ言葉に耐えられますか」

 「当方、罵られることは慣れております」

 「あなたは、マニュアルに書かれていないことがあった場合どうしますか」

 「とにかく考え、わからぬなら上長に尋ねます」

 「あなたが、犯罪を犯せば実名で報道されることはご存じですね」

 「はい」

 「以上です。帰ってください」

 

 陰気なロッカー置き場をぬけ、薄暗い廊下を歩き、ふらふらになりながらエレベーターホールに辿り着く。

 ふと横を見ると、子供と目が合った。充血した目でわたしを睨んでいた。

 わたしは、足早にこの場を後にした。

  

 その後、電話があった。わたしを仲間に入れてくれるそうだ。

 わたしは、仲間に入るべきか悩んでいる。