逃亡日記。

散歩と映画と本がすきだ。

日記「雀」

2024年6月14日 金曜日 日記

 早朝、雨が降っている、と思ったら、屋根でスズメが跳ねていただけだった。ちゅんちゅら言いながら、トタン屋根をタンタン跳ねていた。こっちは豪雨かと思って、憂鬱になっていたが、そうではなかった。焼き鳥が食べたい。

 顔の見えぬだれかに書いているこのブログ。またしても、よくわからない読者が増えている。ほとんどは自分のページに誘導したいだけの野郎(「にしの」おれはプログラミングなどやらん。今すぐ読者登録はずしてほしい)しかいない。

 そんな愚痴はどうでもいい。話は雀だ、そして映画『宇宙探索編集部』だ。この映画、前から観たいと思っていたが、やっとこさ観ることができた。

 おもしろかった。とてもいい映画。ニコニコしながら観れますね。

監督のコン・ダーシャンは、この映画が長編初監督となる。

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 舞台は中国。廃刊寸前の雑誌『宇宙探索編集部』の編集長タンが主人公だ。この雑誌、30年前はUFOブームに乗っかって(実際に中国で1980年代に宇宙ブームがあった)、飛ぶように売れていた雑誌だったが、いまは電気代さえもはらえず、編集部の暖房すら止められる始末。そんなときに、舞い込んだのは中国西部に宇宙人が現れたという情報。編集長タンは、編集部仲間と雑誌のファンである二人の男女を連れて、西へと向かう。西遊記のように。

 「わたしもこういう映画を撮りたい」と思うときがある。この映画を観た時もそうだった。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を観た時も。映画を撮っていて、とても楽しそうだと思うから。作り手の映画を撮る楽しさみたいなものが溢れていて、それだけで観ていてウキウキさせられる。この映画には、そういう楽しさがある。

 それもそうかもしれない。この映画、学生の卒業制作として撮られたそうだ。学生とは言っても、短編映画などをすでに撮っていて、しっかりと評価されている監督の作品だ。とはいえ、なんとも学生映画らしい。この学生映画らしいというのは、要は青春なんだと思う。そして青春というのは、捕らえられそうにない壮大なものを求めることだと思う。UFOを探し求めるこの映画にはそういう青春な香りがあった。

 鍵となる登場人物であるスンという鍋を被った男がいる。この男、孤児で両親がいないため、村全体で面倒をみている。村内放送という仕事をもらい、自分の書いた詩などを放送している。この詩がとても感動的なものへとラストにつながっていくのだが、この村全体でひとりの変わり者の孤児の面倒をみるという共同体のシステムがとてもいいなと思った。変わり者とされても排除することはなく、村での居場所を与えてあげるというところはやさしい。わたしには居場所がない。

 そして、そのスンが落ち目の編集長タンを救ってくれるのである。それはUFOという存在がいるのかいないのかということではなく、自分たちがなぜ存在しているのか、という意味を追求するのだ。

 UFOといういかがわしい響きもつこの事象を追い求めること。それはムダと切り捨てられることではない。それの事象に追い求めること、フランクな言い方をすれば、なにかにハマるということ、誰かを「推す」ということは、その対象がいかにくだらないことであろうが、そのときにだれかが救われることだってある。そして、この世界に無駄なものはない。この世界を構成するものは、すべてに意味がある。そういってくれるようなあたたかな映画だった。